第19章 番外編 いつかの未来
「じゃぁ教えた通りやってみろ」
「はい!母様、今日の診察するね」
引き出しから聴診器をとりだし医者さながらの仕草で診察を始める。手付きはたどたどしくともしっかりと診断を下していく姿は、後ろで息子の診察を見守るローにそっくり。
そもそもの姿がローのミニ版。髪の毛はクロエに似たのだろうが、それ以外は殆どローそっくりで、彼が険しい表情を作ればコピーもの。どれだけ遺伝子が強いのか、ここまでそっくりに育つとは恐れ入る。
ローに聞けば彼自信も父親似だと言うから、トラファルガーの血筋が強いのだろう。
診察を一通り終えた息子は「経過は良好」と最終的に診断をし、背後のローを見上げる。
その視線を受けて、一拍置いたのち、薄く口角を上げて頷き彼の診断を肯定した。
「知識が定着して資料見ずとも判断できるようになったな」
「へへっ、昨日予習したんだ」
「偉いな」
ローの大きな手で頭を撫でられて嬉しそうにする息子に、私も手を伸ばしてその小さな頭を撫でる。
少し照れ臭そうにしながらも、嬉しそうに顔を綻ばせベッド越しに抱きついてきた。
「僕が守ってあげられるように頑張るからね」
少し膨らみの分かる腹に頬を寄せ、手を当てながら呟く息子。数ヶ月先に誕生する弟か妹を大人と一緒に自分も守ると息を巻いていて、勉強にも体を鍛える鍛練にもより一層力が入っているようだ。なんともナイトな男に育っている。
「もっと強くなって、母様も僕が守るからね!」
「それはお前の役目じゃない」
身を乗り出す息子をベッド脇から離してクロエとの間に割り込む男に「大人げないよ!」と息子が言う。それに「うるせぇ」とムッとしながら返すローに声をあげて笑ってしまった。
暖かな、微笑ましい光景。
大切な、宝物達。
〉つづく