第19章 番外編 いつかの未来
「あいつは?」
「…私もまだ見てない」
主語がなくとも聞きたいことは分かった。
まだ目覚めてから姿を見ていない息子だ。
突然親二人が倒れれば不安に思っているだろう。
子どもでない仲間の彼らがこの状態なのだから。
私とローのやり取りを聞いていたペンギンが「ベポなら操舵室ですよ」と言うが、彼のことじゃないと言えばじゃぁ誰、と本気で分からないような顔をされる。
「「私(俺)の、息子…」」
ローと声も揃ったが、それと同時にある可能性に気付き言葉の最後は尻すぼみになったのまで一緒になってしまった。
だって、何かがおかしい。
いや、おかしいのは自分だ。
さっきまでは実感していた腹の重みも、今は全くないじゃないか。
「「「「いつの間にーーッ!!?」」」」
「「いや、いねぇだろ」」
聞いていたクルーが驚き叫びだす影でペンギンとシャチだけは冷静につっこむ。
そしてこちらを交互に見つめてきたかと思えば、その顔はニヤリと頬を染めてやらしく歪み始めた。
「なになに、二人揃って同じ夢見てました?」
「ご家族の夢ですかね?お子さまは何人います?5人?10人?」
にやにやニヤニヤ…
早くその笑みを消さなければお前達が消えることになるぞ、と言ってやりたいがとてもじゃないが顔を上げられなかった。
ローとの家族の夢を見た。
ローにそっくりな頭のいい息子がいて、お腹には新たな命が宿っていた。
幸せな家族の光景を、夢見たのだ。
ちらりとローを盗み見れば、顔を手で覆ってそっぽを向いているが、その丸見えな耳は真っ赤だ。
「いや…ごめん弄りすぎた?」
「顔赤すぎ…」
ローの赤く染まる耳に連れ、さらに顔どころか全身火照った姿を見られたくなくて、騒ぎ立てる仲間をよそに今こそシャンブルズしてくれと心からローに願った。
end.