第16章 番外編 キスしよう
5.ニプルキス
「…うまいか、それ」
「んん、旨いよ~」
机一杯に広げたデザートも、もう1/3も残っていない。
満面の笑みで平らげるクロエはコーヒーを一口飲むと、次のデザートへと休憩なく食べ進める。
この状況になったのには理由がある。
休暇で訪れたホテルでローとのんびり過ごしていたら急に上階からは水漏れし、業者が処理を誤り荷物がご臨終し、なおかつそれを覗いていたクロエの全身もご臨終した。
地にめり込む程頭を下げた支配人から謝罪を受け(おっかない顔の男が始終不機嫌顔で突っ立っていたからね…)、スイートルームに通された上にホテルで提供できるサービスは全て無償で受けてくれるとまで言ってくれたのだ。
マッサージやらあるのにも関わらずクロエが開口一番頼んだのはホテルスイーツの全制覇だった。
「マッサージとかいいのか」
「肩凝りとか無縁」
「そうかよ」
他には目もくれない。
パクパクとリズムよく食べていくクロエに、毎度こんな薄い腹のどこにこの量が入っているのだろうかと考える。
一度バラしてみたいとすら思った。
〉つづく