第16章 番外編 キスしよう
3.プレッシャーキス
なにも身に纏っていない腰を抱き寄せ、もう片手は頭に回し後頭部を包み込む。
逃げられないように、それでもふんわりと包み込む包容にクロエはぱちくり瞬きをしてこちらを見つめてきた。
そのまま顔を近づけて鼻同士が擦れる位置で見つめ合う。
クロエの瞳に自分が見えるのだから、俺の瞳にはぽかんとした間抜け面のクロエが映っているのだろう。
そのまま鼻を擦りよせ、腰を抱いていた手を背筋にそって撫で上げる。
びくっと震える体、漏れる熱い吐息にニヤリと笑う。
ゆっくりと視線をクロエの唇に向け、クロエご希望の触れるだけのキスをする。
交じりあった視線に、柄にもなくこの溢れる程の愛しさが伝わればいいと考えた。
短くもなく長くもないキスを終え、少しだけ頭のホールドを緩めて距離を取る。
未だ固まったまま動かないクロエ。
「ふはっ、お前緊張しすぎだろ」
「ぅっ…」
バクバクと脈を取っていないのに聞こえてきそうな程の鼓動が手のひらに伝わってくる。
「…なんだ、なんなんだこの負けた感は」
「お前が俺に勝てることなんかあったか」
「…こんなキスも出来るなんて反則だ」
「器用なんでな」
「……」
押し黙るクロエを布団のなかに引きずり込む。
これで文句も言われず寝られるだろう。
未だ納得いかないような顔をしているクロエ。
ボソッと「出来るなら最初からやってよ…」と呟いた頃には夢の中だった。
〉唇を閉じた状態で相手の唇へと重ねるキス