第16章 番外編 キスしよう
2.バードキス
入隊してからだいぶ経ったある連休。
一度も会えていなった恋人に再会した夜は久々に死ぬ思いもしたが、翌朝になってみれば全身にわたる痛みも少し愛しく思う。
がっちりと抱き締められながら寝ていたようで、肌が触れる背中が暖かい。
基礎体温が低い彼も今はポカポカと指先まで暖かくなっているから、その湯に浸かるような心地よさに再度目蓋が落ちそうになる。
こちらが身動いでも反応がないから、まだ寝てるんだろうかと彼の腕の中で寝返りを打つ。
頭の上にある顔を見上げれば、普段からは想像付かないようなあどけない寝顔。
青年となる年齢の彼も、寝顔は幼い。
警戒心が強い彼の、無防備な姿を眺められるこの時間がとても好きだった。
(ここまで起きないのも珍しい…)
少し体を上にずらし正面から顔を眺める。
幼い頃から見てきたが、よくもまぁここまで男前に育ったものだ。
同じくらいだった背も、年を重ねるごとに成長痛が痛ェとしょっちゅうぼやく程ぐんぐん伸びていった。
前より深くなった隈を指で撫でながら昔に思いを馳せていたら、くすぐったかったのかローがぱちりと目を開ける。
「おはよう、起こしてごめん」
「…早ェな」
「そうでもないよ、もう昼前」
腰を引き寄せられて軽く眉間にキスされる。
そのまま瞼、頬、鼻、唇と啄むようなキスを落としていくロー。
「ローがこんなキスするの、珍しいね」
「…お前がいつもするから、やってみたくなった」
確かに私はよくするかもしれない。
でもローからされた記憶はあまりなく、彼のキスと言えば腰を砕くような情事を誘うようなものが多い。
「こんなキスもいいでしょ?」
「…まぁ、悪くはねェ」
ずっとちゅっちゅと唇にキスしているから、喋ると吐息がかかる。
吐息と彼の行為にくすぐったさを感じながら、どちらかのお腹が鳴るまで甘い時間は続いたのだった。
〉鳥のように軽いキスを何度も繰り返すキス