第14章 番外編 ハートの1日
「「「いただきます」」」
夕食も例のごとく皆で手を合わす。
バイキング形式の今日は、カウンターに盛られた大皿からみるみる内におかずがなくなり、炊飯器からは米が消えていった。
私も運動するようになり以前と比べて食べる量が増えてきた。
やっぱり私は元より大食いの気があるのだろうか。
ここのところご飯が美味しくてしかたがない。
「…うまいか」
「ん(こくん)」
ローの倍は盛ったお皿に引き気味の視線。
あぁ懐かしい。
ローはいたって普通の量を食べているだけなのに、周囲が大食いばかりで食が細く見られがち。
シャチもペンギンも、もちろんベポだってすさまじい勢いで皿を空にしていっている。
「キャプテンも沢山食べなきゃ体力つかないよ」
「おれは食べてるつもりなんだがな」
「まだまだ新世界基準に適応してないね」
「んなもんあるか」
会話の途中でもベポがついでにと取ってきてくれたおかずに手を伸ばす。
ローは既に食事を終えたのか、お茶を片手にデザートの甘味を食べている。
デザートはバイキングとはならなかったようで一人一人にお茶と共に渡されている。
もちろん私の目の前にも置かれていて、先ほどからローが自分の甘味を半分以上私の皿に移していた。
「この後もトレーニングルーム行くんだろ」
「もちろん」
夜からは潜水すると聞いたから外へは出れないし、読みかけの本もないから筋トレしようと思っていたのだ。
「そんなに食ってよく動けるな」
「少しは休憩してからやるよ」
「それでも消化早すぎだ。一度バラしてみてぇ」
「え、食べてる時はヤだよ」
「食い終わった後は?」
「それだってお腹の中にごはん一杯じゃん。嫌だって」
聞いていた面々はバラされる事に対しての拒否をしないクロエに呆れる。
ローに甘いクロエなら、知的好奇心を満たしてあげるために実験台にでも進んでなりそうだ。
「クロエの嫌がるポイントがわからねぇ…」
呟くペンギンが呆れて見つめるなか、ローはクロエの腹を診る。
どうみたって必要以上の量が体内へと吸収されていく不可思議な現象に、ローが何度かクロエの腹に手を当て、真剣な眼差しでその膨れ具合を見ていた。
そしてその姿を見ていた皆がこそこそと騒いでいたのを後で知った。
「身重の妻の腹に手を当てる夫の図」
そうからかわれていたようだ。