第14章 番外編 ハートの1日
鍛練をしている日もあれば、ローと共に部屋や甲板で読書もする。
主に浮上して晴れていれば甲板で組手かローと覇気の鍛練、潜水していれば読書や調剤や筋トレといった具合だ。
今日は先ほどの無茶で痛めた足を休めるため、読書に切り替える。
ローと共に仲間が組手するのを眺めつつ、ベポの腹によりかかって本を読んだ。
夕刻、鍛練などで汚れてきた者からわらわらと風呂に集まり出す。
男どもは入れ替わり立ち替わり風呂に入っていくし、途切れたタイミングや、女性が宣言した時間に人払いされ、悠々とイッカクと共に入る。
二人では広い浴室に、改めて贅沢だよなぁと湯に沈みながら呟く。
この船は本当に金がかけられている。医療設備に始まり、衛生に関する設備にはとことん金がかけられているのだ。
医者の船長が乗る船。徹底された空間に感心してしまう。
「皆には生活習慣がどれだけ大切か口煩く言うくせに、自分は万年睡眠不足だもんなぁ」
「あの隈はもう消えないね」
ぶー、と剥れながらイッカクが愚痴る。
ローが皆を心配するように、皆だってローのことを心配する。
なんにでも凝り性なローは知識欲もすごく、耐えず新しい知識を吸収しようと夜は本を読み漁るが日常。
「前にね、夜更かしばっかりして心配かけないでって皆で言ったことがあるんだ。全員からの訴えで改心してくれないかと思ってね」
「現状をみる限り改心はしなかったのね」
「…その時キャプテンさ、『お前らの命を預かっている以上、身に付けて損な知識はねぇ。如何なる状況にも対処できるように知識を増やしてなにが悪い』って」
「…」
「格好良すぎて、それ以上なにも言えなくなっちゃったって訳」
又聞きの話でもキュンときてしまった。
昔からローは優先順位を間違えない。
なにが己にとって大事なのか常にぶれない答えを持っていて、彼の行動すべてが物語っている。
一言一句を覚えているイッカクも、再度惚れ直したエピソードに格好いいよね、と感嘆の息を漏らす。
この船に乗れて、幸せだねと同意を求めればもちろん、と返ってきた。
一緒にいても、離れていても、みんなの話題はローのこと。
大好きの感情が振りきっている私たちクルーは、今日もまた此処彼処でローを尊敬し直すのだった。