第14章 番外編 ハートの1日
結局朝食と定めた時間をオーバーし、呑気に歩くローを責っ付きながら食堂に顔を出す。ほら、もうみんな揃っていて、ベポなんか焼き魚が鮭だから、それを目の前にしてよだれが出てる。大分待たせてしまった。
今日も揃っていただきますを唱え、ようやく食事にありつく。隈のせいで不健康そうな外面のこの男も食事の大切さを分かっているためにきちんと食べ進める。男の割には少食だと思うが。
「クロエ食べる量増えてきたね!」
「うん。トレーニングとか組手増やしてるからね。筋力つけるならまだ足りないよ」
「お、今日の相手決まってないなら俺とやろうぜ」
「いいよ」
背後の席に座っていたペンギンが名乗り出て今日の組手の相手が決まる。意外と体術も長けているペンギンとやるのは楽しい。一番楽しいのはローで、二番はベポだが。
22人しかいない我が船だがみんなが一同に集まると大変に騒がしい。必ずどこかでおかずの争奪戦が始まるし、通常の会話さえ賑やかだ。物静かな方のローに、よくもこんなに賑やかな面子が揃ったものだと感心してしまった。彼の手足となり対外的によく動くシャチとペンギンのお陰か。この賑やかさは彼らが引っ張ってきたに違いない。
朝食が終われば各々の当番をこなす。掃除、洗濯、メンテナンスと多岐にわたるが、私は大体洗濯を担う。それは女物は自分で洗っているし、男どもに洗濯物を干されるとしわっしわなのだ。伸ばして干すことを知らないらしく、そのまま乾いた衣服は着心地がすこぶる悪い。だから当番というよりその役割を買ってでたのだ。
因みにローの服はシワなどなく、どうしてだと聞けば彼のだけ別口でやらせていたのだとか。辛うじて服に感心を寄せるウニがやっていたらしい。面倒な手間をかけて…と思ったが、キャプテンさえカッコ良ければオールオッケー!と清々しい笑顔で彼らが言うのだから放置することにしたが、私が担うようになった時点でローの服も当然のように出されるために全ての洗濯(イッカクも手伝うよ)を担うことになってしまった。
「終わった~っ!晴れてて良かった~」
甲板にロープをはりそこに大小様々なサイズのツナギが干されると圧巻だ。今日の洗濯の手伝い当番がジャンバールだったから力仕事はやってくれて助かった。濡れたツナギは重たいのだ。
取り込むのはまだ先だから、彼と共に一休みしようとリビングへと戻った。