第14章 番外編 ハートの1日
仲間が可哀想なことにならないようになるべく共に過ごすようにしている結果、長く時間が取れるのが夜な訳で、翌日に響いてしまうのだ。
新聞を折り畳み顔を上げればそこそこ人が食堂に集まり始める。朝食の時間が近くなるとクロエはローのもとへと向かう。なかなか起きてこない彼を起こすためだ。クロエが来るまでは持ち回りで行っていたようだが、寝起きの悪いローに能力で追い払われることも多々ありみんな戦々恐々としていた。そんな彼らを不憫に思い、その役を買って出たのが始まり。今は定着していて起こしてほしいとき等は呼ばれるようになった。
「キャプテン、入るよ」
気にせず入れ、と言われているが一応ノックと声掛けしてからそのドアをあける。室内を見渡して最後にベッドを見れば丸く盛り上がる布団。まだ寝ている。
近づき覗き込めば頭だけ出ていて、眉間に皺のない穏やかな表情で眠るロー。いつも思うが幼いその寝顔は昔から変わらず、丸くなって眠る姿も変わらない。何かに抱きつきながら寝るのも好きで、今も布団の中には長細い抱き枕のクッションがあり雁字搦めにされているのだろう。昨日は自分がその位置に居たから、寝ていたとしても抱き締める彼の力の強さを知っていて、ご愁傷さまと心のなかでクッションに告げた。
「ほら、キャプテン!朝!」
布団を少しずり下ろし、肩をゆする。あぁ、やっぱりクッションが拉げている。そろそろ中の綿がダメになってそうだ。
「起きてって」
うっすらと開いた瞳に「おはようキャプテン」と声をかけるが、眠く重そうな瞳ながらもジロリとした視線を向けられ首をかしげる。
「……ロー、だ」
一瞬はてなが浮かんだがすぐに気づき、ベッドの縁に腰かけて上半身をローに重ねる。
上から囲うようにローの顔を覗き込み、不満そうなその顔に笑みを返した。
「おはよう、ロー」
言い直し、少しかさつく唇にモーニングキスを送る。何度か啄めば後頭部に手が添えられてキスが深くなった。
「…っ、起きた?」
「まだ」
途切れた隙に離れようとするが、それも押さえられて再度塞がれればもう好きにしてくださいとばかりに体の力を抜く。
いつの間にか視界は反転し、覆い被さってキスしながらこちらを見つめるローはもう目が覚めている、というからんらんとしている。
「んっ、もう行くよ…朝ごはんっ」
「もう少し」