第13章 ハートの海賊団
宴も終盤。
最初にローに言われていた通りある程度飲んだ辺りでストップが掛かる。
最初から飛ばしすぎはダメだと窘められていると再び中央に立ったシャチが声を張り上げた。
「それではここで、入団を記念してクロエにプレゼントがあります!クロエ、こっちこい!」
手招きに応えてシャチの側へとよれば、後ろでウニが大きな包みをもっている。
ウニもそうだが周囲の皆の目がニヤニヤしていて少し気味が悪い。早く渡したくてしかたがない、早く反応が見たい。そういった声が視線だけで聞こえてくる。
シャチの「プレゼントFOR YOU~」の掛け声と共に手渡されたそれ。なかなかに大きくてしかし柔く比較的平たい。想像が付かずに袋の上からぐにぐにと掴んでみたりしていれば、開けろと促され、視線に応えて包みを開いた。
「これッ…!」
「仲間の印、ツナギだ!」
白にワンポイントのハートのシンボル。
見渡せば皆が着ているお揃いのそれが、自分の手にあった。
袋の中には同じものが数着。
これから毎日着る、ハートの…ローの仲間である証が詰められていた。
じわじわと目元が熱くなり、ぐっと力を込める。大勢の前で泣きたくはないが、泣きたいほどの嬉しさが胸いっぱいに広がっていく。
「嬉しい…ほんとに、嬉しいッ」
語彙力を失った返事しかできなかったが、それでも皆が頭やら肩を叩き改めてようこそ、と歓迎の意を示してくれるのに感謝を込めて頷く。
元敵の自分を受け入れ、仲間としてハートのシンボルを着ることを許してくれた皆。
これからそれに精一杯、自分の全てを懸けて応えようと、これから背負うシンボルに手を当て誓う。
もう、前世のような結末にならぬように。
「おーなかなか似合うじゃねぇか!」
皆からの催促もあり薄着の服の上からツナギを着てみた。
以前にローの私物のツナギを着たことはあったが、自分専用に貰ったそれに袖を通すのはとても気分がいい。
ゆとりもあるが、サイズはピッタリ。
伸びもよく戦闘の激しい動きにも柔らかく形を変えてくれそうだ。
オーダーメイドのものだな。
普段着となり消耗の激しいツナギを外注で揃えるなんて、なんてリッチなんだ。