第13章 ハートの海賊団
夕日の眩しさに手で影を作りながらメインストリートを歩く。隣を歩くローは帽子を深く被り直して日差しを遮っているが、それでも眩しいのか目を細める。
東西に伸びる通りを心なしか早歩きのクロエはこれから向かうお店に期待を寄せていた。
その理由はホテルを出るときの会話にあった。
「宴?」
「あぁ。なにかと理由付けて騒ぎたいだけなんだがな」
「店貸しきってやるなんて豪勢だね」
「まぁ今回はお前の歓迎会がメインだからだろ」
「え?前に船でやらなかった?」
「やったな。2回目だ」
「え、意味分かんない…」
「初上陸で仕切り直しだそうだ」
「ふーん…」
「そしてお前の酒解禁祝いだ」
「ふーん……………えっ!!?」
それからと言うもの浮いてしまうんじゃないかというくらい足取りは軽く、歳を考えなければスキップしたいくらい楽しみで仕方なかった。
軽く中毒状態だったからアルコール接種なんて論外で、リキュールを使ったスイーツですらドクターストップが掛かっていたくらいなのだ。だから酒の解禁は事実上完全に回復したことを示していて、もう待ちきれない想いから目の前に酒瓶が踊っていた。
そんな浮き足立つ様子を見ていたローは「制限はするからな」と再三注意しているが果たして聞こえているのかは疑問だ。
メインストリートから一本小道に入ったところにあるこじんまりとした店。20数人の貸しきりならちょうど良い大きさのお店は、既にガヤガヤと賑やかな音が外まで漏れている。
ローと二人で中に入るとこちらに気づいたペンギンが声をあげて迎え入れ、クロエは腕を引かれるままに中央へと立たされた。
「えー、皆様注目ー!揃いましたので始めたいと思いまーす」
ジョッキを片手に声を張り上げるシャチは、皆に酒が行き渡ったか確認する。
クロエの前にもジョッキが渡され、久々に見た褐色の泡立つ液体に体がふるっと震えた。
酒を目の前に歓喜で体が震えるなんて、これじゃぁアル中と言われても否定できない。
そんな様子をいつの間にか中心から端のカウンターへと席を移していたローだけが呆れたように此方を見ていた。
「新たな仲間の歓迎と、完全回復にー!」
「「「かんぱーいっ!!」」」
ノリ良く合わされた声にぶつかるジョッキ。
飛び散る液体も気にせず皆に合わせて口を付け、一気にビールを喉へと流し込んだ。