第13章 ハートの海賊団
島はそこそこな大きさの、なんてことない普通の島。
派手な観光資源はないが、自然の恵みを生かした郷土料理や加工品などが沢山あり、近隣の島からもそれを目当てに訪れる人もいる、そんな島。
「穏やかなところだね」
「あぁ。中心街に賑わいがあるのは助かった」
背の高い建物が並ぶ繁華街。
お土産など売る露店街など対外向けの施設も多々並ぶ。
今はその中の一角、ホテル街へと向かっている。
ホテル街と言っても夜の匂い漂う方ではなく、温泉街とも呼べる小さな一角だ。
天然温泉を引いている施設が数ヵ所あると聞き、どうせなら温泉楽しみたいと向かっているのだ。
「俺は温泉は力が抜けるから苦手だ」
海の水が流れ込み地熱で暖められた温泉。
能力者のローはニガテのようだ。
「まぁまぁ。私しかいないんだから、力が抜けつつも温泉堪能しなよ」
「無茶言うな」
なんだかんだ言いながらも一緒に入る。
繋いだ手が機嫌良さそうでこちらも楽しみになってくる。
外観でよさそうな所をパッと見で選びカウンターへと向かう。
空き部屋を聞けば露天の付いた部屋があると聞き即決だ。
ルームキーを気分良く指先で振り回しながら階段を上った。
「いいねいいねっ!」
豪華、というわけではないが小綺麗な畳張りの和室。
和の国から秘密裏に取り寄せた畳、とかは鎖国のあの国の事だから眉唾物だが、い草の匂いがリラックスさせる。
襖を開ければクイーンのローベッドが鎮座していて、その壁の一つは露天風呂を眺められるガラス張り。
「さっそく入ろうか」
「おい、風呂に浮かれるのは構わねェが、宿取った理由を忘れるな」
今にも外へと続く脱衣所に向かおうとするクロエを引き寄せ、ぐっと腰を寄せる。
触れ合った下腹部に緩くも勃つローのものが当たり、ぴくっと体が固まった。
「わ、忘れてないよ…というか、がっつかないように気を反らしてるのに…」
「反らす必要がどこにある」
もう俺らしか居ないと吐息混じりに言われ、吸う呼吸の音と共に唇が重なる。
角度を変えて触れるだけのキスが焦れったい。
緩く誘い込むように口を僅かに開けても、ローは反応せず、唇を離してしまった。
「…っ、ロー?」
もっと、濃厚なのが欲しい。
情事の始まりを感じさせる甘く痺れるいつものキスが欲しい。
思いを視線に込めて見つめるが、ふっと笑った顔に背筋がヒヤリとした。