第13章 ハートの海賊団
イッカクに声をかけて二人並んで風呂へとはいる。
ポーラータングの浴室は数人が同時に入れるくらいには広さがあり、タイミングの合う数人で順に入っている。そのため二人しかいない女性のイッカクとクロエは、いつも大体一緒に入浴していた。
例外としてローの個室にはシャワールームがついているが、浴槽も好むローはこの浴室を使うことが多かった。
「やっぱりお湯に浸からないと疲れ取れないよね」
「確かに…温まる…」
洗い終わった二人は並んで湯船に浸かる。
ふぅっと染み渡る温かさに息が漏れる。
二人しかいないために余裕のある湯船は手足を伸ばしても余り、昨日使った柚子の皮が浮かべられていてとてもいい香りがする。
たまにコックが気を利かせて再利用するために取っておいてくれたりするのだ。
「順調にいけば明日は島に上陸だね。新鮮な野菜沢山食べたいなぁ」
「水耕栽培の野菜にも限度があるしね…」
この船は色々特殊だが、水耕栽培しているのも面白いところ。クルーの趣味が高じて船旅には欠かせないものとなっていた。
まったりとお湯に浸かりながら明日の事を話していれば、なにかに気づいたイッカクがすすすとクロエの背後に回った。
「うーん…我が船長ながら独占欲強すぎるのは如何なものかと」
「ん?」
振り返りイッカクを見れば、ここ、と首を指差される。
自分では見えない位置を指差されたが、その場所とイッカクがローの事を口にした事から思い当たるものがあり、思わずパチリと勢いよくその箇所を掌で覆った。
「あはは、今さら隠したって遅いでしょ。ずっと見えてたんだから」
「いや、そうだけど…」
泳ぐかのようにクロエの周りをスイスイと移動して観察してくるその目は好奇心で一杯で、イッカクだからか嫌な気はしないが少しだけ居心地の悪さを感じる。
男性と同じように女性のみになれば猥談だって少なからずするが、だからといって話でするのと実際にその痕を見られるのでは恥ずかしさがある。
「首、胸…うわ、背中すごいよ!」
「や、そんな見ないでよ…」
「たってすごいから!因みに歯形もあるよ」
「イッカク~っ!」
うなじにかかった髪の毛をどけていたずらに覗き込むイッカクを牽制するかのように距離を取り、首までお湯に浸かるように姿勢を低くした。