第13章 ハートの海賊団
接するローの腹とクロエの下腹部。
動く度にくちっと粘着質な音が聞こえるのを無視していたが、仕返しのように指摘されると顔が熱くなる。
「負けるのはどっちだか…」
「耐える…よ…」
このまま腰を揺らしたいところだが、そうもいかずローへの愛撫も中途半端に彼から降り、横に寝転んだ。
チラリと視界に入った時計は、この行為を始めてから長針が一周していた。
「一時間程度の触れ合い、だよね?」
「そうだ。終わりがないと止め時もわからねぇしな…」
というよりも意識して時間で終わらせないと、興奮で我を忘れ最後まで致してしまうだろう。
火種が燻っているのをなんとか無視していれば、ローから「腕貸せ」と引っ張られる。
「ん?…どうぞ」
素直に片腕を広げれば、肩のあたりにローの頭が乗っかった。
横向きで抱きつくように寝転んだローは、同じくローの方を向いて横向きだったクロエの胸元にすっぽりと顔を埋める。
(これは…!?ローの究極の甘えんぼ体勢!!)
軽く足を曲げてクロエの足も絡めとり抱きつく姿は木にしがみつくコアラ。
そんなコアラを包むように背に手を回し、頭が乗っかる腕も肘を曲げて届く範囲で頭を撫でてあげた。
普段胎児のように丸まって眠る癖のあるローは、たまにクロエの腕の中で寝ようとする。
いつもと逆なその姿勢は結構レアで、心臓が狂ったように脈打つ。
「ふっ、早ェな」
「…っ!!」
埋めた顔のまま視線だけをこちらに投げるロー。
吐き出される笑いの吐息も、動く度に肌を掠める髭も、どれもこれもがビリビリと体に刺激を与えて、そのしんどさにクロエは片手で目をおおった。
「はぁぁ…早く朝になって…」
「は?」
それかこの男と別の部屋で寝かせてくださいと願いたいが、それでもこのレアなローを見られなくなるのは嫌だから我慢するしかないのか。
意味わかんねぇと呟くローは惚けてるのか素なのか、とにかく寝るのに落ち着こうとしているのだから、わざと色事を誘うかのような手付きで体や腰を撫でるのをやめてほしい。
だから、払い除けても懲りずにまたやってくるその手の甲を、強めにつねっておいた。