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【ONE PIECE】人はそれを中毒という

第12章 青紫の眼と新たな仲間


自分を支えてくれた隊の皆の顔が浮かぶ。
解体されることは予想していたが、丹精込めて作り上げてきた隊だ。
少しの寂しさと、他所に取られた悔しさが胸を占めた。

『皆、あなたの為に心は繋がったままです。他所の隊に行こうが、何かあれば全力でお力になりますよ』
「ありがとう。心強いよ」

それこそ死の鍛練を乗り越えてきた猛者達ですから、その執念も半端ではありませんからね!と意気揚々言われる。
確かに、何をやっていてもしぶとく粘る奴ら。
どんな無茶振りにも応えようと奔走する部下達は、違いなく背中を預けて戦える子達だった。

「ジル…」
『はい』
「本当に、ありがとう。ジルが助けを求めてくれたお陰で、自由に生きてられる」
『…』
「長い間、私を支えてくれてありがとう。ジルがいたから軍と呼べる規模の自隊を持てたし、成長してこれた…私には勿体ないくらいの、最高の相棒だよ」
『…っ、こちらこそ…あなたの部下になれて、光栄でした』

少し震えている声が電伝虫から聞こえる。
普段クールに物事に対処するジルだが意外と涙もろい男。同僚の生まれたての赤ん坊を見ただけで感動して涙ぐむ男だ。今の彼の様子なんて、電伝虫の表情を見なくたってわかる。
また、そういう自分も熱いものが込み上げてきていた。一朝一夕では語れないほど彼との付き合いは長いのだから、これで終わる彼との関係が、少し寂しい。

暫く余韻を引きずったのち、ジルが「お願いを言ってもいいか」と聞いてきた

「願い?」
『はい。貴女に対しての、元部下達からのお願いです』

しっかりとした口調に戻り、お願いと言いながらも強制力を滲ませた声色で言うそれは、仕事をサボった後に良く聞いていた声。
懐かしい、と思いながら「聞ける範囲でなら」と返答する。

『なるべくなら平穏無事に小さな町でおとなしく暮らして欲しいです』
「ん…いきなり難題…」
『…ですよね。まぁ無理だとはわかっています。なので、絶対に、捕まらないように、使えるものはなんでも使って逃げきってくださいね…』
「うん」
『貴女が囚われることなく過ごせるのならば、私たちは協力を惜しみません』
「うん、ありがとう」
『だから…、』
「ん?」
『この…貴女に繋がるこの電伝虫を、私に下さい』

予想外のお願いに、言葉途切れた。


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