第12章 青紫の眼と新たな仲間
ローは洗髪が終わったクロエを抱き、自室へと向かっていた。
既にヒビの固定以外は処置室でやることはないから、緊急時のために処置室は空けておきたい。
というのは建前で、本音はこれ以上眠るクロエを仲間とはいえ他の男に見せたくなかった。
早々に自分の部屋に必要な道具を移動させたローを、シャチが呆れた顔で見ていたのが先程までの光景だ。
僅かな振動でも響くのか、たまに顔をしかめるクロエ。
極力揺れないように歩き、自室へと入れば暖めておいたベッドにそっと寝かせた。
そこでかちゃっと金属音が響く。
シャンプー後にクロエに再びつけ直した手錠だ。
起きたときに気付いていたのになにも言わないクロエ。
どうせ自分が海兵だから、とかくだらない理由で無理やり納得したんだろう。
検査のために外した時も視線だけで外してもいいのか?と人の顔色を伺っていた。
別にこれは海兵だから付けているわけではない。
クロエの内にいる存在に対して警戒しているのだ。
まだクロエの意識が戻っていないあの時に顔を出したあれは、ローだろうが仲間だろうが躊躇なく襲ってくるだろう。
クロエの意識が戻った今、寝ている時にその存在がまた現れるのかどうかはわからない為、用心しての事だった。
広めのベッドで、クロエを抱き抱えて自分も横になる。
クロエを助け出してから録な睡眠が取れなかったせいもあって、意識が戻った今、どっと疲れが体を襲っていた。
温もりのある方へ顔を寄せてくるクロエを眺め、そのラインを確かめるように体に触れる。
長期間の体への負荷によって、以前よりひと回りほど小さくなったように感じられる。
自分と同等か、悔しいが現時点では自分以上の力をもつクロエは、守られるより守る側。
だが今だけは自分の腕のなかで守られるクロエに頬が緩み、愛しさが増す。
やはり男としては愛する女くらいは己の手で守ってやりたいし、頼られたい。
眠る小さな頭を胸に抱え、覇気の修練に一層力をいれようと意気込んだ。