第12章 青紫の眼と新たな仲間
ベポが離れ、起き抜けに組み強いた男を解放してやり頭を下げる。
状況がわからなかったとはいえローの仲間をメスで襲ってしまったのだ。
まだ掠れているが、お水を貰ったことで潤ってきた口で謝罪した。
「ごめんなさい」
頭を下げるクロエに慌てる仮面の男。
傷もないし平気だと言ってくれる彼にお礼を述べた。
「キャプテン、目が覚めたことだし一旦離してやって検査しましょうよ」
目が覚めて良かったと頭を撫でてくるペンギンは、未だにがっちりとクロエを抱き締めたまま動かないローに声をかける。
それでもまだ動かないローはクロエの首筋に顔を埋めたまま、至極小さな声で「心配した」と言った。
「ロー…助けにきてくれて、本当にありがとう」
長身を丸めて抱きつくその背中を上から下へさすりながら感謝を述べる。
ロー達が助けにきてくれなければ脱出など出来なかっただろう。
億越えの海賊だってもう少し体の自由があるのに、まさかあそこまで徹底的に拘束されるとは思いもよらなかったのだ。
「お陰で、またこうしてローに触れることができた」
背中に回していた腕に力を込めて、自分より大きな体を抱き締める。
少しの間ぎゅっと力を込めていれば、軽く息を吐いたローが体を離した。
「こんな思い、二度とごめんだ」
「…うん。ありがとう」
頬に触れるローの手が温かく、それにすり寄れば険しく眉間にあった皺が少しほぐれた。
「検査をする。ペンギン、準備頼む」
「アイアイ」
「イッカク、手伝え」
「了解!」
側にいたペンギンと騒ぎを聞いて後から来たイッカクに頼むと、ローはクロエを抱え上げようと膝裏に手を伸ばした。
「ちょ、自分で立てる…」
その手に捕まる前に体を後ろにずらし、自分で立とうとした。
しかし…
「え、」
「ほらみろ」
力をいれたはずの足はまったく言うことをきかず、崩れるように体が傾く。
それに備えたように抱きとめたローは、今度こそクロエを抱え上げて寝ていた診察台にのせた。
「暫く体は使い物にならないと思え。投薬の上に栄養失調と脱水。癒えてきたとはいえ身体中骨にヒビが入り、打撲に裂傷だらけ。動けても車椅子だ」
「……」
ボロボロだねぇ…とどこか他人事のように笑っていればパコンと頭をファイルで小突かれた。