第12章 青紫の眼と新たな仲間
目を開けようとして目蓋に力をいれる。
なんとなくパリパリとしたような開けづらさを感じながらもこじ開ければ見慣れない天井があった。
まだぼやける視界を左右に動かせば医務室のような、そんなところだとわかる。
手当てされたのか、意識を失う前の体の重さはなかった。
自分のおかれている状況はいまいちわからない。
ただ最後の記憶は、ぶちギレた形相のローが刀を手に暴れている姿だった気がする。
とりあえず体が動くか確認する。
左右の手を上げてみればぎこちなくとも動く。
ついでに点滴と、手錠が見える。
それを見てまだ自分は世界政府に捕まったままかと溜め息一つ。やはり助けられたなんて朦朧とした頭が救いを求めた結果、見た幻覚にすぎなかったのか。
途端に動く気もなくし、持ち上げた腕をベッドに戻す。
眠っている間にガイアから得た記憶が膨大すぎて頭がくらくらするのだ、起きている必要もないしまた寝よう。
そう思い再び目を閉じたときだった。
重たい鉄のドアが開く音。目蓋の裏で明るくなる室内に、数人の知らない声。
ベッドの回りにあった器具をカチャカチャと弄る音。
その中に刃物のような音はないか耳を澄ますのはもはや癖で、その音を耳がキャッチした瞬間、出せるだけの力を込めて飛び起き、側に立つ男に飛び掛かった。
「うわっ」
男の上半身に馬乗りになり両腕を足で押さえつける。
側にあったカートから銀に光るものを掴み、男の首もとに食い込ませるように押し付けた。
「おい、なんの騒ぎ…」
ここで漸く室内の明るさに目が慣れて、目を細めながらも自分の下にいる男を見る。
へんな仮面をつけている。
「クロエ」
自分を呼ぶ、低く、少し震えているような声。
視線だけ上げれば走り寄ってきた声の持ち主が視界いっぱいに広がり、抱きすくめられた。
「…ろ、ぉ…」
なんだこの声。
自分の聞いたこともない掠れきった声に驚くのと同時に痛いくらいに体を抱き締められる。
肩から顔を出して息を吸えば、視線の先に久しく会ってなかったシロクマがいた。
「クロエっ、よがっだぁ゛~~!!」
「ぐっ」
突進してきたベポ。
クロエを抱き締めるローごと抱き締めた彼はボロボロと涙を流しながら顔を擦り付けてきた。
よしよしとベポのふわふわの体を撫でていれば、一番下で押し潰されていた男が「ギブ…」と声を漏らした。