第12章 青紫の眼と新たな仲間
「お前も地下牢行くのか」
「もちろん、昨日の補給船から買った薬使ってるんだろ」
「あぁ、やっと大人しくなったってさ」
部分的に聞こえた会話。
この船の地下牢にいるのなんてクロエしかいない。
ジルの情報だが、この船はクロエの為に臨時で出されたものだ。犯罪者の相乗りはないだろう。
胸くそ悪い会話に拳を握りながら、二人のあとを静かについて行く。
同じフロアの奥、格子が見えてきたそこは地下牢らしく
空っぽの檻がいくつも並ぶ。
その一番端に数人いるのが見えた。
(あそこか…)
目の前を歩く先ほどの海兵の首を打ち、倒れる体を抱えて音を立てずに近くの檻に放り込む。
そして人のいる檻に近づき、様子を見ようと目を向けた瞬間、ローの思考が止まった。
背後から羽交い締めるように腕を押さえる男。
大きく開かされた足の間に座り、体を寄せる男。
左右に囲い込むようにいる男。
それらを認識するが早いか、背後で鬼哭の鞘が落ちる音がし、能力を展開したルーム内での残虐な人体解体ショーが始まった。
「ぎゃぁあぁっ」
「な、なんだ…どこからっ!」
「お、俺のあじがぁあっ」
通常ならばルーム内で切られても痛みはない。
しかし理性が飛んだローは痛みを伴わせた為に、体を切り刻まれた男達の叫びは凄まじかった。
刻まれたことで死にはしない。
血も出ないし簡単にくっつく。いつだったかベポがやさしいね、と言ったが今のローは死の外科医の名に相応しい姿をしているだろう。
刻まれている本人達もショック死しそうな光景に、ローの頭のどこかが冷えていくのを感じた。
上階で慌ただしく動く音が聞こえ始めたとき、自分を呼ぶ小さな声をローの耳は拾った。
「クロエッ」
クロエはマットの上に力なく横たわっていて、抱き起こし血の気のない唇に耳を近付けるが、その後はなにも聞こえなかった。
(くそっ、こんなんにしやがって…)
体の状態を見て眉をしかめる。
痛々しい注射痕の数々に暴力の痕であろう打撲や切り傷のようなものがあちこちにある。
また、囲まれていた時は頭に血が上ってあまり見えていなかったが、どうやら強姦に関しては未遂のようだとほっと息をつく。
上体は肌が露になっているが下はきちんと衣服を身に付けている。
痕もなければ男達の欲望をかけられた様子もなかった。