第11章 露呈
『…間に合いますか?』
粗方報告を受け終え、電話には聞こえない位置でクルーに進路の指示を出す傍ら、不安そうな声が受話器から聞こえた。
その不安もわかるため、ローは心配するなとだけ答える。
この男に、自船が潜水艦だとは伝えていない。
その事からこちらの正体がばれる可能性があるからで、七武海入りを目論むローとしてはこれからやることを悟られるわけにはいかないのだ。
彼が教えてきたエターナルポースで行く筈の航路。
そこはただでさえ新世界の海で航海が難しいにも関わらず、輪を掛けて問題だらけの海域だった。
だが海上がどれだけ荒れていようが自分達は海中を進む。
このとき程潜水艦でよかったと思ったこともなかった。
「護送船の構造と乗船人数を教えろ」
理想は海中で護送船の真下に付け、ローの能力でクロエの元へダイレクトに飛び、戦闘にならずにクロエを回収すること。
それになるべく近付けるように作戦を練っていった。
その日の夜。
ローはリビングにクルーを集めた。
話しておかなければならないことがあるからだ。
「古参のやつは知っていることだが、全員に情報共有しなきゃならねェことがある…」
足を組み、ソファに座るローは一枚の過去の新聞記事を皆に見えるように掲げる。
「あ、シャボンディ諸島で見た闘神って呼ばれてる女海兵…」
「クロエ、だっけ?」
「えっ、まさか護衛でその女海兵がいたりするんすか!?」
紙面に大きく写るクロエの顔に、うげーっと悲鳴を上げるクルー。
古参の幼馴染み達はローの言いたいことがわかったのか黙ったまま。
むしろ他のクルーのこれからの反応を楽しみにしている顔だ。
「いや、これから救出しにいくのがこの女だ」
「…へ?」
ぼかん、と間抜け面がチラホラ。
そこでいち早く状況を理解したイッカクが、恐る恐るといった感じで声を上げた。
「じゃ、じゃぁキャプテンの恋人って……海軍中将のクロエ?」
「そうだ」
「「「「えええええええっ!!??」」」」
きーんと耳鳴りがするも止まない声にローは自室へと踵を返す。
その際シャチとペンギンの肩にポンと手を置く。
「ちょ、キャプテン!これ放置ですか!?」
「あとは任せた」
「そんなーッ」
我に返った全員に詰め寄られるシャチ達を横目でみながら、ローはリビングの扉を閉めた。