第11章 露呈
「ちょっとアンタら!どういうこと!」
イッカクに絞め殺さんばかりに胸ぐらを捕まれたシャチは、大きく前後に揺さぶられる。
「だ、から…キャプテン、の…恋人が、クロエなん、だっ…」
「さっきそれは聞いたわよ!以前紹介してもらった同じ名前の女は、過去の女なの!?」
「ち、が…」
「イッカク、シャチ離してやらねぇと、そろそろ泡吹くぜ」
ペンギンの助け船にようやく服を離してもらったシャチに代わり、ペンギンが皆に聞こえるように説明し出す。
「皆が会ったことあるのは、変装したクロエだ。昔からキャプテンの恋人はあいつ一人だよ」
「よかった、クロエって名前が好きな性癖でもあるのかと思った」
「キャプテン聞いてなくて助かったな、ウニ」
記憶と写真を比較しているのか、まだ新聞記事を凝視するクルー。
今はもう慣れたことだが、変装し始めた当初は見慣れない女が親しげに話してくる姿に、頭が変になりそうになったものだ。
二人のエピソードを聞きたがるクルーに、ローが怒らなさそうなことをかいつまんで話す。
大体は馴れ初めなど聞きたがったが、なぜに部外者の自分達が人の馴れ初め話を話さなければならないのか。
それだけは自分で聞けと一蹴した。
「キャプテンか選ぶ人だからそこらの普通な女とは思ってなかったけど…まさかの闘神とはなぁ…」
「じゃぁシャボンディ諸島で俺たちじゃなくキッドとばかり戦ってたのも、キャプテンを逃がすためだったのか…愛だ…」
「女将校のエリートで、戦いの神と称される程強くて…尚且つ超美人…とんでもなくハイスペックな女だよな」
「さすがキャプテン…並んだら美男美女だ…」
「あー…想像しただけで眼福…」
「大丈夫かお前ら…」
ローが大好きなのは重々承知だが、今後は男女セットになりそうな妄想を広げるクルー。
確かに外面だけみればローと並んだ姿など眼福ものだ。騒ぎたくなるのもわかる。
しかしクロエと幼い頃から過ごし、中身を知っている幼馴染みだからこそ、クルーのように手放しでその眼福ものに喜べない。
「お前らもそのうち現実に気付くさ…」
早くクルーに迎えたいよな!と救出に息巻くやつらを傍目に、シャチとペンギンは溜め息をついた。