第11章 露呈
それから数日、変わらずご飯はなにか混ぜられている形跡があるし、尋問と称しての暴力。
弱ってきたら回復させて、また繰り返し。
圧倒的強者だったクロエをいいように虐げられる快感は中毒性をもち、日に日に訪れる海兵は増えた。
「ホントに美人だよな」
「地に顔つける姿なんて想像できなかったが、案外に似合うじゃねぇか」
ゲスな笑みでクロエ傍にしゃがみこむ海兵。
「いい加減情報を吐けよ。そうしたらもう少しマシな待遇になるかもしれないぜ」
胸元を掴みあげて顔を寄せる男に、乾いた口内で精一杯溜めた唾を吐けば、頬にはしる鈍い痛み。
くらりと揺れる視界に目を閉じて耐えた。
「痛いのがお好みだとよ!とんだ変態女だ」
腹部に来る痛みに奥歯を噛み締める。
絶対に声なんか出すものかとより固く口を閉ざした。
その時、地下に降りてくる複数の足音。
クロエの牢の前で止まったそれに海兵が振り返る。
「ベイヤード中将!」
敬礼をして立ち上がった海兵。
要塞の主に場所を譲る。
「おい、意識あんのか」
髪を掴みあげて顔を覗いてくる。
細く開けられた瞳は鋭く光り、いまだ心が折れていないクロエにベイヤードは舌打ちをした。
「お前の世界政府への引き渡し日が決まったぞ」
罪人として投獄されているクロエには教える必要のない情報を話すベイヤードに訝しげな視線を送る。
「ここでの生活が天国に思えるほどの暮らしが待ってるぞ」
ニヤリと笑った顔に目的を悟る。
なかなか折れないクロエの心を折りに来てるのだ。
利用価値のある罪人が、インペルダウンではなく世界政府に引き渡される。
生き地獄も優しく聞こえる、人としての尊厳を奪われ、廃人となってもなお搾取されるだけの存在として扱われる毎日。
「行き着く先は天竜人の奴隷だな。なまじ美人なだけあって引く手数多だ」
ぶっ壊れても必要とされるだけ有り難いと思えよと笑いながら頬を叩く。
「あと数日、ここでの快適な暮らしを満喫するんだな」
手にした注射器をクロエの首に宛がう。
チクリとした後、体に押し込まれる液体。
防ごうにも覇気すら使えなかった。
連れてきた海兵をその場に残し、ベイヤードは踵をかえす。
囲むように立った海兵からその姿が見えなくなると同時に体に力が入らなくなり床に倒れた。