第11章 露呈
海へ出て順調に航海する。
海賊も、海賊になろうと旗揚げしようとするならず者、そして陸のギャングたちを片っ端から捕らえていく。
取り締まる者が後を絶たない近頃は本当に忙しい。
すぐに船の牢も満杯となり、近くの支部と巡回の海を行ったり来たりを繰り返していた。
「クロエ中将!本部より緊急の寄港命令が出ました」
「寄港先は?」
「こちらに!」
海図をもった海兵がそれをテーブルに広げる。
要塞を持つその支部はここから近い。
嫌な予感がするが命令に背くわけにもいかずに了承の返事を送らせて船の進路を変えた。
「なんでしょうね、緊急との事ですが」
「……そうだね」
横に来たジルに頷いておく。
クザンの言葉を思い出し、少し身の回りを整理しておいた方が良さそうだと自室へと戻った。
数日で着く支部に軍艦を寄せ始める。
港には要塞らしく大砲やらがごろごろあるが、不自然な向きだなと勘ぐるのは腹の内に言えないことがあるからか。
ピリピリと警戒しているのが伝わったのかジルが不思議そうに声を掛けてきていた。
「どうかされました?」
「…いや…」
なんとも説明しにくい事だけに言葉を濁していれば船が着岸した。
途端に大量のライトで熱いくらいに照らされる船。
かかれ!との号令と共に雪崩れ込む同胞である海兵たちに部下もろとも包囲された。
「久しぶりだな、クロエ中将」
「ベイヤード中将…」
偏見の塊、そう言われるほど片寄った思考の中将。
実力はあるが男女差別が酷く、殊更最年少で女ながらに中将まで上り詰めた年下のクロエが嫌いで仕方ないらしく、なにかと絡まれる相手だ。
「なんの真似ですか」
「貴様を拘束しろとの命令だ。嬉しくて仕方ないね」
捕らえろ、と命令する声に得物を構える。
理由もわからず拘束される謂れはない。
「おっと、抵抗するなよ。部下が大事ならばな」
状況を理解できていない部下達が同胞である海兵に銃を向けられる。
直接戦えば支部の海兵になど負けない部下達だが、この至近距離からの銃と、陸からの大砲や狙撃にまで無傷で対応はできない。
だから一人で呼ばれず隊での寄港命令だったかと唇を噛んだ。