第11章 露呈
次期元帥を決める決闘。
海軍内でも派閥で荒れに荒れ、クザンの親族であるクロエもとばっちりを受けていたのは記憶に新しい。
埒のあかないいざこざにトップが決闘することで決着をつけようとなり、ついにクザンの敗北と言う形で争いが終わった。
酷い姿のクザンを病室で眺めて、久々に涙が出た。
大泣きとはならないが、静かに流れる涙をぬぐうこともせずに泣いたのはいつぶりだったか。
目を覚ましたクザンは海軍をやめる決意をしていて、クロエにも礼を言ってきた。
「クロエちゃんが俺のために海軍に入ったことも、色々とフォローしてくれていたのも、感謝してるよ」
「おじさん…」
今日は久々なことだらけだ。
大きな包帯だらけの手で頭を撫でられる。
遠い昔の、助け出された頃の骨身に染みたクザンの暖かさを思い出して更に涙が止まらなかった。
「俺は海兵をやめる。だから、もうここに縛られなくてもいい。まぁ続けたければ続けるといいし、他にやりたいことがあるなら、そっちを優先しなさいな」
不器用にゴシゴシと涙をぬぐわれる。
「おじさんは、海軍やめたらどうするんです?」
「俺は少し海を旅するよ。海兵の時では分からなかった世界が見える気がする」
「そう…」
「あのノースブルーの家取り壊さなきゃ良かったね」
「ふふ。そんな一ヶ所になんてじっとしていられないでしょうに」
「まーね」
面会終了まで居座り、そろそろ帰ろうと席をたつ。
このあとは海へ巡回へと出るためしばらく本部を留守にする。
だから海兵であるクザンはこれで最後だ。
元気でね、と言えば頷くクザンだが、ふいに真面目な顔となり空気が冷えた。
「クロエちゃん…」
「…はい?」
トーンをおとした声に、少し近寄る。
雰囲気であまり大きな声で言えないことだと悟る。
「近頃世界政府でクロエちゃんに関して不穏な動きがあってね…」
「…私、ですか」
心臓が一瞬鼓動を強める。
クザンには話していない件が頭をよぎった。
「詳細まではわからないが…上層部が君に関してつぶさに調査し直しているみたいだから、気を付けなさいね」
「調査…わかりました。ありがとうございます」
クザンにもう一度別れを告げ病院を出る。
嫌な動きをする心臓を抱えて帰ることになった。