第9章 シャボンディ諸島
今話題の最悪の世代、そのトップともいえるユースタスやローといえど、覇気を使えないようじゃ私との戦闘はお話にならない。
まだ前半の海では知る機会がなかった様だから仕方がないが、私がローに負けないと豪語してきたのはこれが理由だ。
おそらく得体の知れない力があることはローも解っていただろう。
戦況を見ながら部下に指示を出していく。
主にパシフィスタにはロー達を狙わせ、自分の部下にはユースタスを捕らえるよう動かす。
なるべくならばロー達には逃げてほしい。
(機械なんかに負けないでよ…)
私に攻撃してくるのはユースタスと殺戮武人だけ。
他は威圧だけでも近寄れずにいる。
離れた場所のローはこちらに来ることはまずないし、事情を知らないハートのクルー達も海兵の私を気にしつつもパシフィスタとの戦闘に全力を注いでいた。
「くたばれ闘神!」
「遅い」
面白そうな能力で攻撃を仕掛けてくるユースタスと、死角から刃を向けてくる殺戮武人。
覇気で攻撃をいなし、その首を狙おうと得物を振り下ろせば、危なげながらに逃れていた。
「さすがに片手間では捕らえられないか」
「ナメてんのかてめぇ!」
「お前よりあっちの方が気になるんでね」
ロー達の方を指差せばユースタスは般若のごとく目をひきつらせて吠える。
正直者だもの、すまんね。
ルーキーの二人と遊んでいれば、腕につけた小電伝虫が震える。
二人の攻撃を避けながら手に取り応答した。
「はいクロエ」
『すみません、クロエ中将!今宜しいでしょうか』
「大丈夫だよ」
「くそ女海兵っ!」
『え、交戦中…』
「大丈夫だって。なに?」
『あ、えー、天竜人のシャルリア宮がクロエ中将をお呼びでして。なんでも帰りの護衛をご所望でして…』
「え~…」
確かオークション会場に来てたんだよな。
彼女は一応無事だったんだね。
以前護衛の任務を回されたときに何故だか懐かれた。
事ある毎に護衛だなんだと呼ばれすっかり気に入られてしまい、近頃では遠出したときにお土産を用意して交換し合う仲となっていた。
「こっちどうするのよ」
『増員いたします!近くの将校に連絡取りますので、そこはお任せください!ですのでお早く此方に…』
「あーお怒りなのね、彼女は」
『えぇ、それはもう…』
「わかった。すぐそっち行くよ」
『宜しくお願いいたします』