第9章 シャボンディ諸島
通話を終えると得物を大きく振り二人を吹き飛ばす。
女から吹き飛ばされるとは思っていなかったらしく、着地した先で目を見開いていた。
「もう少し遊びたかったけど、時間切れね」
「逃げんのかよ!」
「…命拾いしたことを喜びなさいよ。二人で挑んできても無謀なことは、もう分かっているのでしょう?」
「……」
得物をしまいながら二人をみれば悔しそうに歪んだ顔。
まぁ今の強さに覇気をプラスすれば私といい勝負になるだろうから、苦戦する立場になるのも時間の問題だ。
二十歳を越えたあたりの血気盛んな若い船長を宥める仮面の男に、理解してくれたことに安心した。
既に向かってくる意思のない二人を横目でみながら自分の隊に声をかけ、その場を後にする。
ちらりとロー達をみればこちらを見ていて、見えるか分からないが口だけで「またね」と別れを告げた。
向かう先はオークション会場。天竜人の護衛の為駆け出した。
「クロエ、行ったな…」
「正直、助かった~って思うのは俺だけ?」
「いや、ほんと俺もそう思う」
ローの近くで戦っていたペンギンとシャチは互いにため息をつく。
パシフィスタでも手一杯なのにあのクロエを相手にしなければならないのは生命の危機を感じる非常事態になる。
だから戦線離脱したクロエに安堵した。
ローは彼らの話を耳にしながら同意する。
目の前のパシフィスタだけならばなんとかできるだろう。
だがクロエは無理だ。最悪対峙した時点で人質と言う形でもいいからつれて逃げようとまで思っていた。
ひとまず面倒な事態にならずに済んだことは良しとしよう。
徐々に壊れつつある機械を止めるべく手を翳した。