第9章 シャボンディ諸島
「……………ごめん、もっかい言って?」
「ですから、麦わら、キッド、ローの3名がロズワート卿一家に手を出し、オークション会場に立て籠っています」
「……………」
頭が痛い。
出勤して数時間。
こんな世間的な大事件が起きるとは思わなかったし、そこに知人の名前が上がるとは夢に思わなかった。
(え、手を出して人質?ナニソレ…)
どうしてルーキーの中でもトップを走る彼らがタッグを組んでいるのかは謎だが、あれほど注意しておいたのに騒ぎを起こすとか天才か?
それとも海兵の私にそんなに会いたかったのだろうか。
「つきましては、クロエ中将にも出動要請が出ております」
「…大将は誰が出るの?」
「大将黄猿が近くにおり、既に出港されております」
「ボルサリーノさんね…」
はーーーーっと長い溜め息が再び出たが、とりあえず伝達にきた海兵に礼を言って退出させる。
傍らにいたジルにシャボンディ諸島に向かう旨伝え、隊とは別に自分は機動力に優れた少数を連れて先にいくこととした。
「全体の指揮は任す。ボルサリーノさんとか他の上官の隊と混ざってきて」
「あなたは少数を連れてどうなさるのです?」
「新しい兵器を使えって伝達もきてるから、それ連れて逃げ道塞ぐように動くよ」
「了解しました。なにかあれば電伝虫で」
「ん。気をつけて」
敬礼をして退出したジルに続き、自分も出動の準備を始める。
準備とはいえシャボンディ諸島はご近所な為軽装だ。
得物を手に部下の詰め所へと向かえばジルがピックアップした少数の部下達が待機していた。
「クロエ中将、出動準備整いました」
大佐の階級をもつ部下が数十名をつれて敬礼をする。
それをひきつれて兵器を取りに行くため本部を移動し、研究棟へと向かった。
「設定は完了してます。貴女に追行しますので自由に行動できます」
「了解。じゃぁ向かおうか」
科学班から兵器を受け取る。
見上げるほどの大きさのそれは無言で立っている。
(悪趣味…)
王下七武海の一人を模したそれはパシフィスタと呼ばれ、人の形をしてはいるが、その顔からは機械音が響いていた。
(さてさて…うまくロー達と対峙することにならなければ良いが…)
もし戦うことになったらどうしようと考えながら、ピコピコ鳴る機械と部下を連れてシャボンディ諸島へと向かった。