第9章 シャボンディ諸島
「先に体洗おうかな」
密着していた体を離して浴槽から出る。
ローに背を向けて座り、持ち込んだお気に入りのシャンプーを手に取った。
目を閉じて鼻歌交じりにごしごし洗っているとローが浴槽から出てくる音が聞こえる。
背後に座った気配がして二人で洗うには狭いのに、と思っていれば頭に自分と違う手が当てられ、がしがしと洗われ始めた。
「ちょ、いたたたたっ」
「?」
飛び散る泡から目を守りながら背後を振り返る。
至極真面目な顔して「痛かったか?」と不思議そうな声色で言ってきた。
「いつもベポは気持ち良さそうにするんだが…」
「クマと一緒にするな!!」
同じ感覚で人間を洗おうとしたのかこの男は。
再び頭に手を伸ばしてきたローは、今度はクロエの様子を伺いながらわしゃわしゃと洗う。
丁度いい力加減に身を任せて目を閉じる。大きな手が頭を包むように洗われて気持ちがいい。
シャンプーが終わり、トリートメントまできっちりと施される。
「ありがとう」
再び纏めあげられた髪の毛に満足してお礼を言う。
次は体を洗おうとボディソープに手を伸ばすと横からそれを取り上げられる。
ローが口角をあげながら、ボディソープを手にこちらを見ていた。
「…先に洗いたい、の?」
イヤな予感しながらも聞いてみる。
「いや、俺は後でいい」
じゃぁ返せと手を伸ばすが持つ手を高くあげられてしまう。
「洗ってやるよ、全身」
やっぱり!
ろくなこと考えていない笑みのロー。
「いや、やっぱいい…またお湯入ろうかな」
「遠慮するな」
腹に腕を回され、ローの足の間に座らされる。
手に取ったボディソーブを泡立て、背中に手が這った。
「また少しキズ増えたな」
「ん…でも痕残るようなキズはないはず」
「そうだな、まぁ残るようなら俺が処置してやるよ」
「頼りにしてる」
するすると泡を追加して腕やら首を洗われていく。
決してイヤらしい手付きではないのだが、雰囲気がイヤらしく思えて身を固くしてしまう。
「なんだ、意識してんのか」
「…して…ないっ」
その様子にローは「意識させようか?」と、わざとらしく胸の先端をさけて回りを撫でるように洗う。
時々イタズラに先端に指を掠めさせるから、体はぴくっと反応してしまう。