第9章 シャボンディ諸島
泡立ちの良いボディソープでクロエの体を覆っていけば全身が泡で埋まる。
それは言葉通りで、もっこもこの分厚い泡の層ができていてさながらベポのようだった。
「すげぇ泡立つな、このボディソープ」
「濃厚な泡だね……もう流しても良い?」
顎下ギリギリまで付けられた泡を吹き飛ばしながらクロエが問えば、ローはまだだと答える。
風呂イスに腰かけ、クロエを引き寄せた。
「次は俺の番だ。洗ってくれよ」
腿に座らせて誘うように薄く笑えば、近い位置で見下ろしてくるクロエが目を僅かに見開いた。
「な…」
「ほら」
言葉がでないクロエの手を取り、ローの胸に這わせる。
もふっとした泡がクロエからローの体に移ってきた。
「どっからこんな事覚えてくるの…」
「シャチ達だ」
以前立ち寄った島で街の女との遊びで体験したとか。
気持ち悪い顔でその時の事を話していたのを思い出したのだ。
やり方を口頭で教えてやればクロエの眉間にシワがよった。
「録でもないことローに吹き込まないで欲しい…」
むくれるクロエの頭を引き寄せて軽くキスをし、下から覗き込むようにクロエを見上げた。
「~~っ!!」
かぁっと顔を赤くするクロエ。
男がやるにはあざとすぎるものだが、クロエはこのローの仕草と表情に弱い。
お願いしているように見せかけて、クロエを思い通りにしたい時には効果的だった。
「わ…わかったっ」
さらにローがじっと見つめていれば、案の定折れたクロエ。
自分の体についている泡を手に取り、ローの肩にのせ始めた。
さらりと泡を肌に滑らせ、また自分の体から泡を掬いとる。
繰り返されるその動作は、洗うと言うよりも塗られてると言う表現が近く思えた。
そのまま泡を移していれば、クロエは自分の体を近づけて直で擦り付けるように動く。
クロエの柔らかい胸がローの上半身を滑り、すり寄る度にローの腿の上を前後に動く脚から目が離せなくなる。
「ねぇ、これのなにが良いの」
「さぁな…少なくともお前のその表情を見てるだけでも俺は楽しい」
「……」
赤い頬で少し恥じらっている様子のクロエはなかなか新鮮だ。
時折足りなくなってくる泡を足しながら体を洗いあげた。