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【ONE PIECE】人はそれを中毒という

第9章 シャボンディ諸島


髪の毛をやってもらうのは、なにも面倒だったからだけじゃない。

(ほら、その顔…)

自分の体に愛おしそうに口付けるローの姿を鏡越しに眺めるのが好きだ。
情事のときよりも優しい口付けはこそばゆい。
瞳を閉じて何ヵ所も跡を付けていくローを見ていれば、一瞬強めに吸われたせいで声が出てしまった。

「風呂入るか」

数秒目が合い止まるが、すぐにローが屈んだ体を起こして後ろを向いてしまった。

(もうちょっと見ていたかった)

シーツを籠に押し込みローの後に続いて浴室へ入った。




「あ~温かさが染み渡る」
「ばばくせェ」
「あながち間違いじゃぁないよ」

ローに背を預けて二人で湯船に浸かる。
お団子を頭上にしなかったのを不思議に思っていたが、今納得した。
ローに寄りかかると私の頭はローの顎下にくる。
これでお団子が乗っかっていれば邪魔になったことだろう。

「気が利くと言うか先読みが細かすぎて怖いと言うか…」
「あ?」
「なんでもない」

誤魔化して深く湯に浸かった。

「古代兵器の話だが、」
「ん?」
「海軍にこの事知ってるやつはいるのか?」
「…んー…」

ジルあたりがなにかを感じ取っているかもしれない。
さすがに核心までは分かっていないだろうが、疑問点から突き詰めて資料でも読み漁れば答えにたどり着くかもしれない。

「捕らえたっつうじぃさんが喋るんじゃねぇのか」
「最初私もそう思ったけど、たぶん言わない」
「なんでだ」
「この力を使うことを危惧して刺し違えてでも私を殺そうとしてきた。だから下手に広めて力を悪用しようとする人の手に渡っても困るって考えてるんじゃないかと」

少し前にあったエニエスロビーの事件がいい例だ。
古代兵器の力と、その抑止力両方を手中にしようとした世界政府。その犬である海軍なんて端から信用なんてしていないだろう。

「私みたいな存在、ヨダレものでしょうね。一個ずつ手間かけなくてもいいんだから」

ちゃぷちゃぷと入れた泡風呂になる入浴剤で遊ぶ。
その手に一回り大きな手が添えられた。

「隠し通せよ」
「ん」
「ヤバくなったら真っ先にウチに逃げてこい」

本当は今すぐに船に拐いたいくらいなんだ、と小さく言ってくれるロー。
甘えるかのように首筋にすり寄る男に口許が緩む。
これは見られたら怒られてしまう顔だ。

(あ~…可愛すぎだよ…)

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