第9章 シャボンディ諸島
くびっとグラスの中身を飲み干したクロエは、新しいボトルを開けた。
「今のお前がそれを飲んだらぶっ倒れるぞ」
アルコール度数の高いその酒は、いつものクロエだとしてもチェイサーをきちんと挟みながら飲み進めるもの。
それを酔った勢いのある今のクロエでは危ない気がしてローは止めようと手を伸ばすが、掴んだのはボトルではなくクロエの手。
ローから遠い方の手に握られたボトルは、そのままクロエが飲んだ。
「人の話聞いてんのか」
「聞いてるけど、聞き入れないだけ」
掴んだ手を辿りローの膝に移動するクロエを抱きとめるロー。
「こんな危険な女を選んだこと、後悔した?」
世界を滅ぼせるよとおちゃらけて言うが、強い光を持っていた瞳は今や憔悴しきっていた。
「関係ねぇな」
肩にクロエの頭を乗せるように抱き寄せる。
戸惑いながらも寄り掛かるクロエの後頭部に軽くキスをした。
「俺は自分の選択に後悔はしねェ。お前が何を背負おうがどうだっていい。古代兵器とかにもあんまり興味ねぇしな」
「…」
「クロエだから側にいるんだ。色んな肩書きがつこうが、お前であるならそれを受け入れる」
「私が世界滅ぼしたいって言っても?」
「その前にドフラミンゴん所のファミリーを滅ぼしてくれ」
「ふふっ、私がやっていいの?」
「俺がしくじったならな。お前になら後を任すから、本領発揮してみろよ」
ローの背中にぎゅっと抱き付き、安心する香りを胸一杯吸い込んだクロエ。
これがあれば正気を保てそうだなと考えたら笑えた。
「私が狂ってきたら元に戻してくれる?」
「やり方判らねぇから暴力的でいいならやってやる」
「私も判らないからそれでいこう」
「ついでにあの3人も参加させるから、リンチされたくなければ夢の存在なんかにのまれんなよ」
「覚えておくわ」
少し軽くなった気分に、お礼をこめてローにキスをした。
「…じゃぁもうひとつお願い聞いてくれる?」
軽いキスに応えてくれるローはクロエ耳を撫でながら続きを促した。
「悪夢見ないように意識飛ばすまで抱いて?」
唇が触れるか触れない位置でそっと呟く。
ペロリと薄い唇を舐めてやると少し目を見開いたロー。
「お誘いとは珍しいな」
「いや?」
「まさか。覚悟しろよ」