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待つ宵 揺らめく水面

第1章 花信風 滝澤 /平子



次の日、政道さんはまた夜深くに私のいる部屋に来た。

血の匂いを纏っていて、ああ、人を殺めてきたんだなと察しがついた。


私は何も言わずに政道さんを見る。

彼の瞳は片目だけが漆黒色に燃えるような赤を宿していた。

狩りをしてきたばかりなんだろう。

それでも彼のことを怖いとは思わなかった。


「…」
「政道さん、一緒に寝ませんか…」


「……お前のこと、喰うかもしんねーぞ」

「政道さんってそんなに大食いなの?」


私がそう言うと漆黒色の瞳は白色へと戻った。


まだ春だというのにここはとても冷たい。

政道さんはゆっくりと、私のベッドの脇にある椅子に座る。


「寝れねーのか?」

「…政道さんも寝れてないでしょ」

「……」


政道さんはぎゅうっと自分の身体を抱きしめて小さく身体を丸めていた。


きっと、ここで、一人ぼっちでそうして耐えてきたんだ…。


私はベッドから起き上がり、政道さんのことを抱き締めた。

昔、そうしてくれたようにぎゅうっと抱き締めた。


「私をここに連れてきたんだから、役に立たせて下さい」
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