第1章 出会い
「えっと…那子さん……?」
慧太くんとわたしの家から徒歩圏内にある家具屋さん。お出掛け兼デート(仮)。
家具屋さんに入るなり、彼はわたしに話しかける。
わたしが首を傾げていると、彼の目線は斜め下へと向く。
「あの……さすがに人前で手を繋ぐのは恥ずかしいというか……」
「そうかな…?だって、慧太くんはわたしの旦那さんだから」
こういうのは当たり前だと思って…と返したはいいものの、なんだかわたしが恥ずかしくなってきた。いいや、わたしたちは仮にも夫婦なんだもの!これくらいは平気にならなきゃ!
そんなことを思っていると、ぎゅ、と温かい感触が握り返してくれる。彼の気持ちが伝わるようで、不覚にもきゅん、としてしまった。
しばらく家具屋さんをうろうろしたのち、気に入った本棚があったからそれを買って帰路に着く。買ったのは折り畳み式のものだったけれど荷物が大きかったから、こういうのは男が持つものです、と言って慧太くんが率先して持ってくれた。本当にわたしの旦那さんなんだなぁ…