第6章 休暇
さて、休暇といっても特にやることは決めていない。
慧太くんはわたしのことをずっと心配してくれていて、昨夜には「那子さんが不安なら外に出なくてもいいんだよ…?せっかくのお休みだしゆっくりしてね」と言ってくれた。
確かにあの時は怖かったけれど、いつまでも引き摺っていたら何も出来ない。
この機会にお料理でも練習しようかな。慧太くんがお料理得意だから、わたしもそれに並びたくて。
冷蔵庫に何か残っているかな、と朝ご飯の材料を探してみる。食パンと卵、バターが使えそうだからフレンチトーストを作ることにした。
あれこれ考えていると、寝室の方向から物音がする。どうやら彼がが起きてきたよう。
「那子さん、おはよう~…」
「おはよう、慧太くん」
少し寝ぼけ眼のままリビングへと歩く慧太くんはちょっとだけ可愛らしくて。
いつもはわたしが後から起きるから、彼が起きたばかりの姿を見られるのはなんだか新鮮に思える。
ふらふら~と歩いてくるから、転けてしまわないかな?と思って彼に近づくと、むぎゅっと抱き締められる。
「わわっ…!慧太くん…まだ眠い、ですか……?」
予想していなかった展開に、朝から刺激が強くてドキドキしてしまう。
「んー…那子さん起きるの早い…
今日も僕が朝ご飯作るよって言ったのに~…」
か、かわいすぎる…
今なら可愛いって言っても許される、かな…?
「わたしは大丈夫だから、今日くらいは任せてほしい…だめ?」
「ん~…わかった」
じゃあ僕はそこで待ってるね、と彼はリビングのソファーへ向かった。
わたしたちの関係は仮の結婚から始まったようなものだけど、今はこうして慧太くんのことも信頼しているし、慧太くんもわたしのことを信頼してくれている。
夫婦って、こういう暮らしをしていくことなんだ。