第5章 距離
「那子ちゃん!!ねぇ!!ここにいる!?」
扉の向こうから声がした。そんな、もしかして。
「真子…!?」
真子が扉を開けて部屋に入ってくると、結城さんはわたしから離れ、チッと舌打ちをした。
「結城さん、わたしの親友に何てことするんですか」
上司だとしても許しません、と真子。
「でも、証拠がないだろう?証拠が無いんじゃあ訴えようがないよね?だから俺のしたことは…」
「ありますよ」
これでもまだ言い逃れするつもりですか?と、真子がスマホの音声ファイルを再生する。
そこには、さっきまでの一連の流れが録音されていた。
「これを上の人間に告発したら…結城さんは部署を飛ばされるでしょうね」
「それは…」
「まぁ、親友を守る為ならそれくらいしますけど」
「そんな…」
那子ちゃん行こ、と真子はわたしの手を引いた。