第5章 距離
「那子ちゃん、おはよ~!」
「真子、おはよう」
会社に到着して早々、わたしは彼女に挨拶をする。
そして、左手薬指のにあるこれのことを思い出して、ふふっと笑ってしまった。
「え、なになに、那子ちゃんが急に笑うだなんて…?」
真子はわたしの周りを確かめるようにくるくると回ると、左手のものの存在に気がついたように大声を出した。
「那子ちゃん、それ……!」
「真子、声が大きいよ~」
「だって、素敵なんだもん……!
那子ちゃんにこんなきらきらした指輪を贈ってくれる旦那さんがいるなんて、憧れちゃうなぁ…」
きっとすっごく良い人なんだろうなぁ、と彼女はわたしの旦那となった人を妄想で空に描く。
初めて真子に慧太くんのことを話した時は怪しく思っていたけれど、この指輪のことがあってようやく、わたしと同じように彼のことを信用してくれたみたいだ。良かった…