第1章 出会い
「みずしろさん、ですね、覚えました」
どんな漢字を書くのかも気になったからついでに教えてもらうと、かぁぁ、とほんのり色づく彼の顔。水城さんって女の子苦手なのかな。
「…あ、名乗ってなかったですね。わたしは篠宮那子っていいます」
彼が考えるようにぶつぶつと呟き、反芻する。え、どこかで会ったことある……とか?ないよね……?
「……“那子さん”って、素敵な名前ですね」
漢字を教えると、こんな返事。
小声だったけれど、確かに聞こえた。にこ、と微笑んだその笑顔に不覚にもきゅん、としてしまった。
そのあと彼の話をしばらく聞いていると、わたしの予想通り今日の合コンには数合わせで来たこと、わたしと同じ21才だということ、音楽を聴くのが好き、だということが分かり、なんだか親近感が湧いた。仲良くできるかもしれない。