第2章 ふたり
「よし、できた!」
料理を作り終わると、ちょうどお風呂のある部屋辺りから声がした。
「お風呂、上がったよ~」
その声を聞いて彼の振り向くと、濡れた髪にTシャツ、短いズボンという格好。意識しなくても、彼の身体のラインがよくわかってしまう。
「あの、慧太くん……!!」
目を逸らしながら、遠回しに伝えようと試みる。この格好で同じ屋根の下だなんて、わたしがキャパオーバーしてしまう……!!
「那子さん、顔真っ赤。どうしたの?」
どうやら、彼には伝わってないみたいだ。
「……わたしには刺激が強すぎます……!!」
お風呂入ってきます!と言い残して、わたしは浴室に走る。
湯船に浸かって疲れを癒やしながらも、ずっと彼のことを考えていた。
慧太くんってば、もしかしなくても天然なのかな…彼自身が女の子との距離の取り方が分かってないのもあるけれど、お風呂上がりのあれは、刺激が強すぎるでしょ……無自覚でやってるんだとしたらもう少しこっちの気持ちも考えてよ……!なんて思う。
結婚したから、それが『普通』なのかな。
ただのお出掛けをデートだって勘違いしちゃうところや、家具屋さんでわたしから手を引いて繋いだ時。慧太くんがふわふわ~と照れてしまって赤くなっていたことを思い出す。あの時は本当に可愛かったなぁ…旦那さんに可愛い、なんて思うのは違うかもしれないけれど。
今度は、わたしが彼の言動に振り回されてしまっている。わたしばっかり好きになりたくないなぁ…形式上とはいえ結婚したんだから、慧太くんにもわたしのことを好きになってほしい。好きになってもらえるように、わたしがもっと頑張らなくちゃ。
お風呂から上がって軽く髪を乾かした後、リビングへ向かうと慧太くんがテーブルに座ってご飯を待っていた。