第2章 ふたり
「ふふ、できたよ」
キッチンで料理をする慧太くんをずっと見ていたわたしに、彼は笑いかける。彼が手にするお皿には、ミニハンバーグとサラダが乗っていた。
「美味しそう…いただきます!」
ぱくり、と一口頬張ると、期待以上の味がする。大袈裟じゃなくて、本当にほっぺたが落ちてしまいそう。
慧太くんが少し不安そうに見つめていたから、とっても美味しい!と言ってみると、それは良かったですと微笑まれる。全然不安になるレベルじゃないと思うけど…
「じゃあ僕も、いただきます」
自分が作ったものとはいえ、きちんと手を合わせてから料理を頂くなんて礼儀正しい人なんだなぁ…
「…慧太くんって、お料理か何か習っていたの?」
いや、言いたくなかったら全然いいのだけど!とも加える。
「…ん~と、料理を習ったことはないけど…小さい頃から料理の手伝いをしていたから、好きになったって感じかな…?」
食べてくれる人のことを考えながらお料理を作るの、すごく楽しいんです、と答えてくれる。
だからって、こんなに上手くなるものなのかな…
わたしが料理下手なのがコンプレックスになってしまいそう…
「あっ、でも、食べるのももちろん好きなので!さっきも言ったけれど、僕は那子さんの料理が食べたいです!」
そんな感情が顔に出ていたのか、慧太くんがすかさずフォローしてくれる。
「本当……?」
「自分のお嫁さんに、嘘は言いませんよ」
…急に『お嫁さん』なんて言われたら、うっかり照れてしまいそうになる。顔が赤くなるのは恥ずかしいから、そういうことを迂闊に言うのはやめてほしい…
「那子さん、顔赤い」
「…慧太くんが急にそんなこと言うから……!」
わたしがそう返すと、彼は脳内が『?』でいっぱいになっているようで分かっていないらしい。
そんなところも引っくるめて、なんだかかわいらしいと思ってしまった。