第1章 出会い
そんなことを考えて、時計を見てみるともう12時。
ここに来る前の感覚のままに、お昼ご飯を作らなくちゃ、と思ったけれど、引っ越したばかりだからキッチンの使い方が分からない。
「あの、慧太くん」
ん?どうしたの?という顔で見つめてくる彼。
「そろそろお昼ご飯を作ろうと思うんだけど、キッチンの使い方を教えてほしい、です…」
「…あ、そっか。じゃあ今日は僕が作るから横で見ててよ」
本当は那子さんの料理が食べてみたいから作ってほしいけど…と慧太くんは笑う。
そんなこと軽々しく言えちゃうんだ。
出会った直後なのに結婚してほしい、だなんてあり得ない話だけれど…料理を食べてみたいだなんて言われたら、本当にわたしに好意を寄せていて結婚を申し込んだんだな、と考えてしまう。
まだ「好き」とは言われていないけれど…
「それで、これを炒めて…」
キッチンでお昼ご飯を作る慧太くんの横で使い方を教わる。
…料理もできるなんて思わなかった。というか、この人色々とハイスペックすぎない……?なんならわたしよりテキパキと手順をこなしてる。
すごい人と結婚してしまったんだなぁ…