第2章 彼の部屋で
「なぁ、なんで俺を呼んだんだ?ロロ?」
ジンさんが愉快そうに言う。
私の身体は片手で拘束されている。
「しっかし、レオンの部屋でまさかこんなことしてるとはなぁ」
「ーーーっ!!!」
恥ずかしさで頭がどうにかなりそうだった。
どう言い繕っても逃れられない。
好きな人の部屋に入って、好きな人のベッドの上で自慰してたなんて。しかも一番見られたくない人に見られたなんて!
落ち着け、落ち着け私。この場からなんとか逃げなくては。
「ジンさん、どうして…鍵かけてたはずなのに…」
本能が危険を感じとる。必死で言葉を紡いで、なんとか、逃げ出す手段を考える。
「俺に開けられない部屋はない」
ジンさんはこともなげに笑う。いまだ!
ジンさんの拘束が少し緩んだ隙に逃げ出そうとするも、その考えは見透かされていたようで、こともなげにまた捕まえられる。
「んで、俺から逃げようとしてるみたいだけど、無理だからな」
「うぅ」
心なしか掴まれている手がさっきより力がこもっている。
「ロロ〜なんで俺を呼んだんだ?」
ジンさんの顔が近づいてきて、唇を吸われる。
「んっ」
硬く閉じた唇をジンさんの舌がこじ開けて入ってくる。
力強い口づけに、頭がくらくらしてくる。
「んぁっ」
息が止まりそうなぐらい長い口づけをされる。肉食獣に食べられているみたいな獰猛な口づけ。なのにトロトロと溶かされるような熱を帯びていて、悔しいけど気持ちいい。また、この野獣に食べられてしまう。
「だって」
「だって?」
「ジンさんがあんなことするから…」
私はジンさんの顔を見ていられず、顔を背けてしまう。恥ずかしすぎる。好きな人の部屋のベッドで自慰しながら、別の人の名前を呼ぶとか。しかもそれを聞かれてしまうとか。私どうかしてる。弁解のしようもないくらい、恥ずかしい。
「俺のせいなのかー?ロロ?」
ジンさんが心なしか嬉しそうな声を出す。
この声は、これからご馳走を食べようと舌なめずりしている野獣だ。
「やだ、もう、やめて…」
これ以上恥ずかしい目に合うのはいやだ。
「相変わらずロロは素直じゃ無いなぁ」
ジンさんは少し呆れたような声を出している。私を拘束する手はゆるめていない。
「ちゃんと素直になってもらわないとな」
そう言うと、ジンさんはまた私の上に覆いかぶさってきた。