第3章 ケーキより甘く、タルトより苦く。【トレ監】※裏
「…ユウ?」
「あっ…すみません可愛くない言い方しちゃって…さ、さあケーキの仕上げに入りましょう!」
「……」
「先輩?っ………!」
突然先輩が私の腕を掴んで調理台に押し倒してきた。
突然のことながら、当たり前のように頭に添えられた手にほんの少しの苛立ちすら覚える。
「…何を勘違いしているかは分からないが…俺はお前のこと、可愛いと思ってるよ」
「………その割には顔とか態度に出ないじゃないですか…私だけときめいててバカみたいです…」
「…そうか」
そう言った後、トレイ先輩は私の元から離れた。
……やっぱり可愛いなんて思ってないじゃないですか…先輩のバカ…
「…私だって可愛い彼女になりたいの———にっ!?」
「———っ」
甘い……
甘すぎてクラクラするっ……!
「ト、トレ…せんぱ…っ」
「っ…——はっ……」
「んぅっ……!ぁっ…」
トレイ先輩はいつだって余裕があって、かっこよくて、優しくて。
付き合ってもう3ヶ月半経つけど、こんなキスをしたことはない。
「もっ……む、りですっ……!」
「……はっ…」
「———っ」
トレイ先輩の目がいつもより熱を帯びていて、強く惹かれてしまう…
「…大丈夫か?少しっ…やり過ぎたか…?」
「だいじょうぶ…です…それより反則じゃないですかっ…?生クリームなんて…」
「っははっ…たまには良いだろ?………俺だって好きな女をいつまでも放っておけるほどできた男じゃないんだ」
「…っやっぱりずるいです…」
頬に添えられた手が実は優しいことも、キスの後の伏し目がちな目にまた一段と好きが重なったことをトレイ先輩は知るはずもない。