第3章 ケーキより甘く、タルトより苦く。【トレ監】※裏
「んぅっ…む、無理ですトレイ…先輩っ…」
「力が入りすぎているんだな…力を抜くんだ」
そう言ってトレイ先輩は私の手を握る…けれど。
「…や、やっぱり無理です!!難しいです!どれだけやってもクリームが均等になりませんっっっ…」
「まぁ初めてにしては上手くできたんじゃないか?」
「うう…すみません………」
私とトレイ先輩は付き合っている。
きっかけは何だったか、定期的にキッチンで一緒にスイーツを作るようになった。
で、今まさにケーキを作っているところ…なんだけど。
スポンジにクリームを塗るのが本当に下手で嫌になってしまう。
「トレイ先輩の方が女子力高くないですかね……」
「そうか?まぁフルーツでも食べてまた頑張ろう」
そう言ってケーキ用の苺を口に差し出してくる。
ずるいんだよなぁ…そういうところ。
兄弟がいっぱいいるから慣れてるんだろうけどさ…
私だけなのかなぁ…トレイ先輩にこんなにドキドキしてるの。
「…どうした?苺があまり美味しくなかったのか?」
「っち、違います!苺は美味しいです!すごく!」
「?そうか…最近ボーッとしていることが多いな?何かあったのか?」
なんでこんな時にまた心配そうな顔をするんですか。
先輩の行動1つでときめいてる私がバカみたいじゃないですか……
「…別に?何でもないですよ」