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番外編の蝶姫

第1章 IFストーリー 安土の蝶と越後の龍 「琴菜様リクエスト」


そう言うと、謙信はしのぶの目を見てその頬に手を当てた。しのぶはそれが恥ずかしくて、手を振払おうとするがガッチリと掴まれており、振り払うことが出来なかった。

「…?何故、明後日の方向を向こうとする。もっと、お前の顔を見せてくれ。」

「…いえ、あのっ…。この状況は流石にまずいかとっ…。」

しのぶは横目でちらりと見える団子屋の店の人や客にキャーキャーと言われているのがとても恥ずかしくて、顔を紅く染めた。それを見て、謙信がしのぶに顔を近づけた。

「いやぁぁぁぁ!!!」

「…っ!」

「…っ何だ?」

突如、聞こえた悲鳴に二人は咄嗟に立って、辺りを捜索した。そうすると、しのぶの見ている方向に泣き崩れる女性がいた。彼女は謙信様を呼び、その女性の下に駆け寄った。

「…どうされましたか、ご婦人?」

しのぶは丁寧にしゃがみながら女性に視線を合わせて話しかけた。すると女性は涙を流しながら話し出した。

「…娘がっ!娘がっ、買い物に行くと言ったっきり帰ってこないんです。それで、おかしいと思って、探して見たら、娘の簪が此処に、落ちていて…。…私っ…。」

そう言って、簪を見せてくれた女性。この汚れ具合からしてまだ、落とされてそんなに時間は経ってないと見られる。しのぶは謙信の方を見た。

「謙信様…これって…!」

「ああ、お前が想像している通りだしのぶ。…この俺の支配下で人攫いとは随分と粋なことをしてくれるではないか。だが…。」

謙信はこの事態に怒りながらも、先にしのぶに贈り物を贈ってやりたいと思っていた。謙信にとってはしのぶより優先することが無かったのだ。…だがしのぶはそれを許さなかった。

「…謙信様、私、この人の娘さんを探してきます。」

「なっ…待て!しのぶっ…!!」

謙信の静止を無視して、しのぶは呼吸で姿を消してしまい、二人は離ればなれとなった。完全に置いてきぼりを食らってしまった謙信だった。



場所は変わって、城下から離れた人通りの少ない場所。

「…一体どこに…?」

しのぶは呼吸を使いながら、屋根へ飛び移り例の娘を探していた。そんな時だった。

「…へへっ。こりゃあ、上玉じゃねぇか。随分といい女拾ってきたなぁ?」

「へいっ…人通りの少ない道を歩いていやしたから、さらいやすかったっすよ。…おまえら、さっさとこの女、袋につめちまいな。」

「へいっ!」
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