第1章 田中龍之介
「失礼を承知で訊くんだけどさ、田中のどこがいいの?」
「えっと…初めて会ったのが、駅前で他校の男子にしつこく誘われて困ってる時で、田中先輩が助けてくれたんです。他の人たちは見て見ぬ振りして通り過ぎていくのに田中先輩は助けてくれたんです。一瞬怖い人だと思ってしまったんですが。途中まで一緒に帰ってくれたり…すごく優しかったんです。それで好きになってしまいました」
「あいつの威嚇顔はヤバイからな。誰だって怖がるよ。女の子なら尚更怖がるって」
「今日の練習を見せてもらってた時も、気合いがすごいなぁって。
みんなもそうなんですが、なんか田中先輩は人一倍とゆうか。
なんかそんな姿もかっこいいなって」
「佐倉さんだっけ?顔真っ赤だよ」
「ご、ごめんなさい」
「田中が羨ましいよ、ホント。あいつさ、バカだし見た目あんなだけどいいやつだから。ちょっと人より熱すぎるってゆうか沸点が低いってゆうかだけど。バレーへの情熱は誰よりもあるしさ」
「縁下さんも田中先輩のこと好きなんですね」
「まぁ、好きかもね。バカだけど自慢の友達だよ」
「縁下さん、バカ2回言いましたね。でも私はそんな田中先輩も好きです」
「佐倉さんの田中愛はすごいね」
「悪りぃ悪りぃ遅くなった。じゃ帰るか」
「はい、よろしくお願いします」
「縁下さん、お疲れ様でした」
「うん、またね」