第1章 田中龍之介
「「お疲れっしたー」」
田中先輩に見とれていたら結局最後まで居てしまった。
さすがにこの時間は真っ暗なんだ…
1人で帰るのはちょっと怖いな。
誰か同じ方向に帰る人いたりしないかな…
「佐倉、送ってくからちょっと待ってろ」
「え、でも先輩のおうち私と逆方向だった気が…」
「別に大した距離じゃねぇって、気にすんな。とにかくちゃんと待っとけよ」
そう言って部室に走って行った。
うそっ‼︎田中先輩と一緒に帰れる‼︎やったぁーーー。
心の中でガッツポーズ。
先輩はどこまで優しいんだろ。
キュンキュンしちゃいます‼︎
「もしかしてキミ、前に田中を訪ねて教室に来た子?」
「??」
「あ、ごめん。俺、田中と同じ2年の縁下。なんか廊下が騒がしいと思って見てみたら田中と話してる子がいて、君に似てたかもって思って」
「はい、多分…。あ、でも、他にも田中先輩のところに来た女の子がいるかもしれませんが」
「ないないない。田中は女子に嫌われる事はあっても好かれる事はないからわざわざ訪ねてくる子なんてそうそういないよ」
「そうなんですね…」
「ところで君さ、1つ訊きたいんだけど。田中の事その、好き…なんだよね?」
「えっ?」
「あ、ごめんごめん‼︎違ってたらごめん」
「いえ、そうじゃなくて…。どうして…その事知ってるんだろうと思ってびっくりしたんです。誰にも言ってないのに」
「きみさ、すごく分かりやすいよ。誰が見ても分かると思う」
「え、うそ…」
「うそじゃないよ。隠してるとは思えないくらい分かりやすい」
きゃーーーっ、なんて事だ‼︎恥ずかしすぎる。私そんなに分かりやすいんだろうか。
「あ、あの…田中先輩にもバレてたりします…か?」
恐る恐る訊いてみた。
「あぁ、あいつは大丈夫、気付いてないと思う」
「よかったぁ…」