第1章 田中龍之介
手を引かれたまましばらく無言で歩いた。
「あ、あの…」
声をかけると立ち止まって振り返った。
「あの…手…」
私が掴まれてるままの手を見ると、
「おぉぉぉーーー‼︎悪りぃ…」
凄い勢いで手を離し飛び退いた。
「助けてくれてありがとうございました。どうしたらいいか困ってたところだったんです」
「なんかヤバそうに見えたから声かけたんだけど良かったんだな」
「もちろんです‼︎助かりました。ありがとうございました」
「おう。お前うちの学校の生徒だよな。あ、俺、烏野高校2年の田中龍之介だ」
「あ、はい‼︎私は1年の佐倉ひのといいます」
「なぁ佐倉、お前はもう用は済んだのか?それともこれからか?」
「買い物頼まれたんですが、もう終わりました」
「俺も用は済んだから、一緒に帰るか?あ、嫌じゃなかったらなんだが…」
「いいんですか?」
「さっきの奴らにまたその辺で会っちまうといけねぇからな」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
「よし、じゃあ行くか」
初めて見た時は怖そうな人に見えたけど、すごく優しい人だ。
一目惚れ…しちゃったみたい。