第1章 田中龍之介
次の日、田中先輩を訪ねて2年生の教室に来た。
でも、田中先輩が何組か分からない。
誰かに訊いてみようと廊下にいた女子の先輩に声をかけた。
「あの、すみません。田中龍之介先輩が何組か教えて欲しいんですが…」
「田中?1組だよ。呼ぼうか? 田中ー、可愛いお客さんがアンタに会いにきてるよー」
なっ⁉︎そんな、えっ⁉︎
なになに?と教室の中が騒がしくなっている。
教室の前後の戸の所から何人もの顔がこちらを見てる。
やっぱりやめておけばよかったかな…恥ずかしい。
「オメェらどけよ、邪魔だっつうのー。通れねぇだろうがぁ。
おっ?昨日の、えっと…」
「佐倉です」
「お、おう、佐倉…。で、どうしたんだ?」
「あの…昨日のお礼を言いたくて…」
何だ何だ?告白か?ちげーだろ。だよなー。1年の女子だ。可愛いな…
「お前ら少し静かにしろ‼︎全く…。うるさくてごめんな」
「いえ。あの、昨日は本当にありがとうございました。
お礼に、嫌いじゃないといいんですがチーズケーキ作ってきたんです。あ、食べやすいようにスティック状にしてみたのですが…」
「俺にか?」
「はい」
「これ全部?俺に全部か?」
「はい‼︎」
「めっちゃうまそうな匂いするぞ。サンキューな、佐倉」
「お口に合えばいいんですが…」
「合う合う。どんなもんでも合う。今食ってもいいか?」
「どうぞ」
「うめぇ。おい、これスゲーうめぇぞ‼︎お前すげーなこんなの作るって」
田中ー俺にもひと口くれ やなこった
先輩がお友達さん達に揉みくちゃにされながら必死にチーズケーキを守ってる姿が可愛かった。
「じゃ、私戻ります。ありがとうございました」
私は田中先輩と周りのその他の先輩方に頭を下げて教室に戻った。