第2章 烏養繋心
それからしばらくしたある日、いつものように体育館の中をパタパタと走り回っていたら武田先生が入ってきた。
ん?誰かと一緒みたい…
「集合ー」
大地さんの声に私も急いで先生の所まで走った。
え⁉︎繋心⁉︎
私は思いがけず繋心に会えた事が嬉しくてニヤケそうになるのを必死に我慢した。
繋心こっち見ないかな〜なんて思いながら。
「今日から指導をお願いする事になった烏養さんです。烏養監督のお孫さんで…」
先生が説明をしている時繋心と目が合った。
私は嬉しさをこらえてちょっとだけ微笑んでみた。すると一瞬で繋心の顔つきが変わった。
繋心はビックリした顔のあと、怖い顔になった。
目がすごく怖い。
何?なんで?なんで私睨まれてるの?
私は訳が分からないまま目を逸らした。
「えーっと、ひのさん。烏養くんに練習記録とか見せてあげてください」
「はい…」
恐る恐る繋心に近づきノートを渡した。
「おい。なんでお前がここにいんだ?」
周りに聞こえないように小声でしかし迫力のある声で言われた。
「なんでって、部活の時間だから…」
「なんで男子バレー部の中にいるのかって訊いてんだ」
「だからなんでって言われても…。男子バレー部のマネージャーだからいるんだけど…。ねぇ、なんで怒ってるの?」
「な⁉︎お前女子の方じゃなかったのかよ」
「男子だよ。言ったじゃん」
「聞いてねぇよ。なんで男バレなんだよ」
「誘ってくれたのが同じクラスの日向くんだったし、それに繋心のバレーのお世話」
「やめろ」
「え?」
「今すぐやめろ」
「な、なんで?頑張れって言ってくれたじゃない」
「女バレだと思ってたからだ。男バレだと分かっていたら反対した」
「そんな。どうして男子はダメなの?分かんないよ」
「烏養くん、ちょっといいかな」
「あ、はい」
先生に呼ばれて離れる間際
「とにかく反対だ。今日のうちにやめろ」
と言い放っていった。
なんで?今まで頑張れって言ってくれてたのに急に。
訳わかんない。