第8章 【酒と女でダメになる究極の例】
「おっ麻辣火鍋だ。辛いよ~これは」
「胃ィ荒れてんのにそんなに飲んでまた辛いもの……」
「僕、辛いの大好き」
顔に赤みが差し、酔ってきている白澤に桃太郎が呆れた調子で返す。
だがやはり上司には逆らえないのか、せかせかと皿についでいる。
「鬼灯さんもどうぞ」
「あ、私は結構です」
「……桃太郎さん、私が、貰う」
「え?」
いつの間にかテーブルの方に戻ってきていたが会話に割り込む。
「いいから」
「………!」
それまで黙って麻辣火鍋を頬張っていた白澤だったが、いつもより強めのの言い方に違和感を覚えたのだろう。
すぐに反応してこちらを振り返る。
「え…………お前……もしかして辛いの…食えない人?」
ピク、と鬼灯が固まる。
そしてーーゆっくりと視線を逸らした。
白澤がそれを見逃すはずない。
「ほ~?ほほほほほ火鍋粉!だっせ!!お兄さん次中国を訪問する際は四川を案内しますよお~~~」
アーハハハハハハと高笑いする白澤。
普段あまり仕返しらしいことが出来ていないのでよほど嬉しいのだろう。
ーーが。
「いますよね。ああやって辛い物が苦手な人を何故か見下す辛党」
今度は白澤が固まる番だった。
「大して強くもないのに大酒かっくらう小虎のくせに……殺殺処堕ちろ」
ふう、とわざとらしくため息を吐く。
ちなみに殺殺処というのは婦女子に酒を飲ませてファイト一発した奴が堕ちる地獄である。
「……たかが肝臓が強いだけで何語ってんだか」
祝いの席だというのにもかかわらず相変わらずケンカし始める二人。
「…………あ、え~と…どうしましょう」
カラオケに興じていたお香さんがいつの間にか自分の方へ来ていたに話しかける。